Sunday, December 16, 2012

パタゴニアで暮らすきっかけ 1



VW:最初ここに来たのはいつ?

木乃実:最初に来たのは、2007年の三月。だから今から五年前。
結婚した時にポールが「世界で一番綺麗な場所を見つけて、そこに家を作ってあげる。」と言って、
それからずっと場所を探していたの。
メキシコに住んだりね。

メキシコもすごく綺麗で、大自然の山の中で暮らしていて良かったんだけど、
やっぱりレボリューション(革命)があったり、治安がいまひとつで、「ここじゃないね。」ということになった。

ポールがある日突然「チリのパタゴニアってどう?」と言ったの。
「行ったことないし、わかんないなぁ。」と言ったら、見せてくれ写真の風景がちょうどこういう風景だったのね。

川があって、森がすごく広がっていて、緑があって山があって雪が降っているきれいな景色。
その時の印象が、クリーンなエネルギーですごくいいとこだなと思った。
それでパタゴニアへ来て探し始めたの。

五ヶ月間、アンデスの山に近い小さな村にキャビンを借りて住んでいて、もう冬だったから雪の中を馬に
乗せてもらって、山を2時間くらい登って土地を探しにいったりした。

その馬で連れて行ってもらった家が、日本でいったら物置を少し大きくしたような小屋だったの。
羊を飼っている羊飼いの兄弟が二人住んでいるんだけど、そこへ行ったら「さあさ、どうぞ。」って言われてね。
薪ストーブがついていて、お湯がしゅんしゅん沸いていた。マテ茶を入れてくれて、チリの人は
マテ茶を回し飲みするんだけど、マテ茶を勧められたらお客さんどうぞ、っていうことだと聞いたの。
勧められているから、ちょっと歓迎されてるんだなと思った。

そこは電気がないから、ロウソクしかないのね。
もちろん携帯もないし、テレビもないし、電話もない。
電気とガスがないから、薪ストーブでご飯も煮炊きしている。

だけどすごく静かな、いままで車さえ通ったことのない場所だから、自然のエネルギーが強かった。
自然のエネルギーがすごく大きくて、人のエネルギーが小さいから、自然が生き生きしている感じががしたのね。

「ここいいねー」と言ったんだけど、結局売っていた土地が、横100メートルの縦1.7キロだった。
そんな細長いストリップじゃちょっと買えないよね。
三区画か四区画買ったら結構大きくなるよって言われたんだけど、そんな予算はなかったから買わなかったの。

わたし達が当たり前に思っていた、水道から水が出るというのではなく川のお水が木で作った箱の一段目に流れて入り、二段目三段目と流れてゆく。一段目はお水を飲用で、二段目はお皿を洗う用。

二日間だけお世話になったんだけど、そういう生活がすごく忘れられない、いい想い出になったのね。
「不便じゃないんだな。」と思った。
不便でもちろん大変だろうけど、わたしにとってはとても、自然と自分が対等に真摯に生活しているって感じがしたのね。

文明の利器やマシーン(機械)やいろんなもので、わたし達自身人間として持っているパワーより
もっと大きなパワーで自然をエクストラクト(搾取)していく… そういう感じじゃなくて、手を使って… 手斧で薪切ったり… そういうのがすごく新鮮だったし、真摯な感じがしたんだと思う。

五ヶ月間雪の中を土地探していたけれど、なかなか見つからないからもうダメだねって諦めそうになった時に、
ポールが「でも絶対にここに僕は土地を買わなきゃいけない気がするんだよ。」と言ったの。
「どういう所が欲しいか、とにかく二人でちゃんとビジュアライズ(描き出す)してみよう。イメージをちゃんと作ってみよう。それで二人でエネルギーにフォーカスしよう。」
何となくって探していたけど、本当はどんな所が欲しいんだろうねって話した。

その話をした後にね、偶然何回も行ったり来たりしている間に、友達がいっぱい出来たのが
このラフンタという村なの。
ここで出会ったロドリゴという青年が、「見つかった?」って聞くから「全然見つからないよ。」って言ったら
「ここじゃダメなの?」と言うのね。
「ここすごくいいところだけど、誰も土地売ってないじゃない。」
「ラジオに出てみたらどうかな? みんなラジオでそういうお知らせするよ。」って彼が言うから、彼に通訳をしてもらってラジオに出たの。

その次の日からキャビンのドアをノックする人がいっぱい来た。
土地の権利書もってね。
「土地売ってるんですけどどうですか? 買うんですよね?」って言って。(笑)

40ヘクタールとか70ヘクタールとか150とか、すごく大きな牧場ばかりだったの。
「うちは1ヘクタール探してるんですよね。」って言ったら、ロドリゴが「あれ、友だちのおじさんが1ヘクタール持ってるって言うから、それを見に行ってみたら?」と言ってくれて、来たのがここだったの。

No comments:

Post a Comment