Friday, December 7, 2012

お金のこと 今の暮らしのこと 1



木乃実:前の旦那さんが亡くなったのが、7月17日。彼の誕生日が6月27日だったのね。
その時、彼は40歳のお誕生日だったの。
彼の両親が、彼がバイクを乗るので、バイクは危険だからって、23くらいの時に生命保険を掛けてたものを、
ずっとわたしが引き継いで、受取人になって… 彼の生命保険を掛けてたの。

彼が40歳になる時に、選択があった。
40になると病気になったりするリスクも高くなるから、掛け金が倍になって、
万が一の時の受け取りも多くなるというもの。
入院費や死亡時の受け取り金が多くなるか、掛け金そのままにして、受け取りはずっとと減るという選択。

その時わたしは、「一人しか働いていないし、彼は病院を行ったり来たりしていて治療費もかかるし 
掛け金、倍かぁ。どうしようかなぁ」と思っていた。
多分、掛け金3万円が6万円に増えるとか、そんな感じだったのね。
うわぁ 辛いなぁと思ったんだけど、でも、そのまま続けた方がいいって、掛け金を倍にしても
続けた方がいいって、どうして思ったのかわからないんだけど、なぜかそう思ったのよ。
自分でそう思ったのか、ここら辺で誰かがささやいたのか、わからないんだけど
なぜか、そう思った。

わたしが保険会社に電話するんだけど、担当の人に
「それは旦那さんご本人から、聞かないといけないことになっているんです。」と言われたの。
掛け金を増やしても続けますということは、本人が言わないといけなかったのね。

それである日、保険会社から電話が来たの。
担当の人が彼に説明するのよね。
だけど、その時彼はもう、自分で何を考えているかわからないような状態だった。
「なに言ってんの?なに言ってんの?なんて言えばいいの?」ってわたしに聞くのよ。
「『はい』って言って。『はい』って言って。」って、わたしは言うの。
「なんで、ぼくは『はい』って言うの?」
「これから掛け金は多くなっても、また、入院退院を繰り返したりした時には、ちゃんと保険金が出るんだから。
これから、どんどん入院したりするかもしれないでしょう?だから『はい』って言ってよ。」
「ええ、わかんないよ、わかんないよ」って言いながらも、彼は「はい」って言うの。
『はい』って言って、電話は切れるんだけど、
その時に「あぁ、良かった、はいって言ってくれて」って思ったのね。
彼は、なんで自分が『はい』って言っているのかわからない状態で、『はい』って
言ったのね。
それから二十日後に亡くなっているの。

そんなこと(保険のこと)は、まったく忘れていたのね。
お葬式のあとに、保険屋の外交の女の人が来るのね。
「手続きです」と言って。
「保険、続けててよかったですね、奥さん。あの時やめてたら、 受け取りは今の五分の一くらいでしたよ。」って
言うのね。
「ああ そうだ」と思った。
あのとき、訳わからないままでも、『はい』って彼が言ってくれて、ほんとに良かったなって思ったの。
助けてもらったなっていうか… そんな気がした。

その時の保険のお金と、あと自分で掛けてた、養老年金や個人年金とか、
OLをしてた時に、わたしいっぱい貯金してたの。
そういう貯金が、今すごく役に立っている。
もうずっと、貯金だけで暮らしているからね。

貯金はどんどん減っていくのよ。
だけど面白いことに、貯金が最初たくさんある時には、「えー、お金が減っていく、減っていく。」って
すごい心配になるじゃない?
今までずっと、お給料入ってきて、使ってちょっと貯金して、貯金がちょっとずつ増えていくという決まった流れ。
何か、大きいなものを買う時にちょっと貯金が減るんだけど、でも、またお給料から貯金して・・・ 
わたしはコツコツ型の人だからね。
だけど、入ってくるものが全然無くて、出て行くだけっていうのはちょっと寂しくて、「どうなっちゃうの、
どうなっちゃうの?」と心配になった。
口座を見て、不安になっていたんだけどね。

ある時点を過ぎたらもう、あるものはあるんだから、あるだけ自分達が楽しんだり、
このお家に投資するのもそうだけど、これからの自分達の生活をもっと居心地よく暮らしやすくしたり、
楽しくしたりする為に、今あるんだから使えばいいじゃないってことに気がついた。

今あるのに「無くなったらどうしよう。ゼロになったらどうしよう。」と考えているのも、
エネルギーの使いどころが間違っているなっていうのがわかったの。

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