Wednesday, December 12, 2012

工夫して暮らす



木乃実:チリの平均月収が3万円くらいなのね。
パタゴニアのひと達の月収は、もっと低くて、現金で入ってきても2万円とか1万円。
現金収入があればいいほう、みたいな感じなの。
土地はたくさんあって、牛もいるんだけど、現金が無いっていう人がたくさんいるのよね。

最初に来た時に、梯子が必要だった。
道具屋さんみたいな所に行って梯子を探したら、梯子売ってないのよ。
「梯子は、どこで買ったらいいのかな、また6時間先のホームセンターまで行くの?」と言いながらふと見ると、
家を作っている大工さんの梯子があって、よく見たら自分で作っているのよ。
トンカチと木材、角材で。
「あっ、作ればいいのか!」それで梯子を作った。

家具屋さんもないのよね。
テーブルや椅子をどうしたらいいんだろうと思い、ひとの家に行ってよく見ていると、全部自分で作っているのよ。
やっぱりそれも作っているのね。
「ベット、どこで買うの?」って言ったら、
「ベット? 作るでしょう。みんな自分で作ってるよ」って言われてね。
マットは買わなきゃいけないんだけど、マットの下の台を見ると、みんなその辺の、自分の森にあるような木で、
上手に作っているのよね。
「作るのは台だけじゃない。これ、シンプルよ。」って言われて、「あっ、なるほどね。」
結構、そういう新しい驚きが、いっぱいあった。

わたしは何でもね、「あ 買えばいいんだ。買わなくちゃ」という具合に、
買うっていうことをいつも思っていたのよね。
でもここでは「買いたい、買わなくちゃ」と思っても、モノがないから買えないわけじゃない?
買えないことは最初は不自由だったのに、だんだん買えない、買わないになっていって、
作ることが面白くなっていくの。
買えないことは、良かったなって今は思う。モノがないっていうこと、商品が売ってないっていうことは、
すごく良かったなって、思うようになった。
モノがないと作ろうとするし、発明しようとするし、工夫しようとするしね。

東京に生活しているときは、工夫して暮らすって感じは全然なかったね。
朝起きて、電車乗って会社行って、電車乗って帰って来て、スーパー行って買い物して、ご飯作って、お風呂入って寝る。
その中にあんまり工夫する余地はないし、「工夫」っていう言葉さえ忘れちゃうような生活だったと思う。

わたしが子供の頃は、モノ作るのが大好きだった。
あの頃、リカちゃんっていうお人形があって、みんなリカちゃんマンションっていう、リカちゃんのお家を
買ってもらって持っていたの。
だけどうちの父は、そういうの、すぐ買ってくれるタイプじゃないから、
そんな高いの買えないってずっと言っててね。

わたしは、みかん箱に段ボールの紙で壁を作って、台所作って、テーブルと椅子を作って・・・って、
自分でリカちゃんのお家を作っていた。
ハサミ使って、絵を描いてたり もともとモノ作りはすごい好きだったのよ。
だけど、そういうことを忘れていたの。

だからなんにも無い所に二人でポーンと来て、なんにも無い所から作っていくっていうのが、
すごく楽しかったのね。

水をやるのも、じょうろ買わなきゃってね、すぐ「買う」という発想だから、じょうろを買おうとしても、
どこにも売ってないのよね。
「じょうろって、どこに売ってるの?」って聞いたら「じょうろって、なに?」
はぁー、どうしたらいいんだろう… と思っていたら、あっ、空き缶!  
空き缶に穴開ければいいと思って、釘で穴開けてバケツからお水をいれて、水まきに成功。
ポールが「あー工夫してるねぇ」って言ってくれた。

そういう思考回路が、前は無かったのよね。

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